訪日中国人観光客を迎え入れている企業や官公庁の方、越境ECで中国人をターゲットとしている企業の方など、集客や売上アップのためにWebサイトを制作したりマスメディアでの広告を打ったりと、あらゆるプロモーションを行っている方は多いでしょう。
独自のWebサイトは制作がハードな上なかなか集客に繋がらず、マスメディアでは視聴者が情報を信頼しないなどマーケティングが難しいと考える方も多くいます。現在の中国ではSNSの利用者が爆発的に伸びていることから、SNSを使ったWeb・デジタルマーケティングが注目を浴びています。
しかし中国にはインターネットやSNSアプリの利用規制があるなど、独特な事情があることを理解しておく必要があります。
そこで今回は「中国のインターネットやSNS事情」や「中国で人気のSNS」ついて紹介していきます。
具体的には、
- 中国の特殊なネット事情やユーザーの特徴
- 中国で「使用できないSNS」&「人気のSNS」
- 中国で人気のWeb広告とは
- 中国Webマーケティングで成功させるためのポイント
中国人をターゲットにWebマーケティングを行っている方はぜひ参考にしてみてください。
中国の特殊なネット事情やユーザーの特徴
中国は厳しい情報規制により世界的に利用されている検索エンジンやSNSアプリを使うことはできません。そのためWebマーケティングを行うにあたって中国発の検索エンジンやSNSを利用するなど、対策を取る必要があります。具体的に中国にはどのようなネット事情があるのか、またユーザーの思考についても解説していきます。
特徴①グレート・ファイアウォールがある
中国には他国にはない特殊な事情「グレート・ファイアウォール」もしくは「金盾(きんじゅん)」と呼ばれるものがあります。「グレート・ファイアウォール」とは香港・マカオ・台湾を除いた中国本土の国域でインターネットの接続規制や遮断される、ネット検閲システムのことです。1998年から運用が開始され24時間体制で数十万人~数百万人にも及ぶサイバー警察が監視・パトロールを行っていましたが、現在ではAI(人工知能)を使った自動操作になっているようです。
規制対象はSNS、Webサイト、政府に対する批判的な意見、ニュース、アダルトサイトなどがあり、監視を行っているのはテキストだけでなく、画像や動画に至るまで細かく言論や情報の統制が行われています。
制限されているのは具体的に世界的に利用されているGoogleやYahooなどの検索エンジンで閲覧できるWebサイトや、YouTubeやFacebookなどのSNSが利用できません。そのため中国発の検索エンジン「Baidu(バイドゥ)」、中国版Twitter「Weibo/微博(ウェイボー)」、中国版Line「WeChat/微信」など中国専用のものを活用して、情報の投稿・閲覧・Webマーケティングを行う必要があります。
特徴②口コミが命
中国人は普段の生活からマスメディア(テレビ、ラジオ、新聞、雑誌)よりも、口コミを信じる文化があります。口コミには「家族・友人・知人」「SNS」「ECサイト」など種類があり、商品を購入する際、旅行へ行く際の計画などさまざまなことに利用します。口コミの確認には口コミサイト/アプリやECサイトの評価ページなどから、店舗や製品・商品・サービスの質を確認した後に、購入や詳細について情報を得るという行動を取ります。
AmazonとInstagramがミックスされたようなサービスである越境EC口コミアプリ「RED(小紅書/レッド)」は、ユーザーは20代の女性が多く登録ユーザー数は3億人以上(2020年時点)と多くの人が利用する巨大なアプリです。さらに一度のアプリ利用時間は平均45分、月に何度も利用する人がいるほど、中国での口コミは重要視されています。
特徴③キャッシュレス化が進んでいる
中国では財布を持つのは時代遅れと言われるほど、キャッシュレス化が止まりません。韓国、イギリスに次いで3番目のキャッシュレス大国になった理由には偽札が多く出回っていたこと、高額紙幣が無く持ち運びに不便といった点があげられます。
買い物・公共料金などの支払い・ネットショッピング・お年玉に至るまでキャッシュレス決済は当たり前の存在で、現金を使うことは今や少なくなっています。最も中国人に使われているのはLINEのようなSNSアプリWeChatの「WeChat Pay/微信支付(ウィーチャットペイ)」、IT企業アリババの「Alipay/支付宝(アリペイ)」の二大サービスで、いずれもスマートフォンを使ったQRコード決済です。
特徴④ライブコマースの需要の増加
Eコマースで商品を購入する際にスマートフォンを使って生中継をしながら購入できる、ライブコマースが年々増加しています。通常インターネットで商品を購入する際は写真やテキストのみで良し悪しを判断するしかなく、失敗してしまうケースも多々あります。しかしライブコマースであればさまざまな角度から商品を見ること、コメント欄にて販売者に質問ができること、商品の良さを販売者が事細かく説明しているなど多くのメリットがあります。
中国で「使用できないSNS」&「人気のSNS」
先述したように中国では「グレート・ファイアウォール(金盾)」によってインターネットやSNSの利用が制限されています。中国国内ではどのSNSが利用できないのか、またはどのSNSが人気なのかについて紹介していきます。
中国で使用できないSNS一覧
- コミュニケーションサービス「LINE」
- コミュニケーションサービス「WhatsApp」
- 社会的つながりを作る「Facebook」
- 最大140字内でつぶやく「Twitter」
- 画像共有サービス「Instagram」
- 画像共有サービス「Pinterest」
- 動画共有サービス「YouTube」
- 動画共有サービス「TikTok」
- ウェブのことならなんでも「Google関連」
(Gmail 、Googleマップ、Googleドライブ、Googleフォト、Google Playストア)など
基本的に現在日本で利用されているSNSアプリを開こうとするとアクセスできず利用不可となります。Googleマップなど一部のアプリは開くものの、位置情報が正確でなかったりバグが起きたりなど役に立ちません。
中国で人気のSNSランキング5選
中国発のSNSは友人や家族、会社の仲間とただ単にコミュニケーションをとるものではなく、普段の生活に欠かせないニュース、商品購入時にお得な情報、旅行など趣味を楽しむためのブログなどの多くの情報が飛び交っています。そしてフォロワーが多いアカウントでは、商品やサービスの紹介ページへ多くの人が集まり、売上がアップするということも日常茶飯事です。それでは中国で人気のSNSを紹介していきます。
- 第1位:WeChat/微信(ウィーチャット)78%
- 第2位:Sina Weibo新浪微博(シンラン・ウェイボー)56%
- 第3位:Baidu Tieba/百度贴吧(バイドゥ・ティエバ)50%
- 第4位:Tencent Weibo/騰訊微博(テンセント・ウェイボー)39%
- 第5位:TikTok/抖音(ティックトック)36%
第1位:WeChat/微信(ウィーチャット)
「WeChat/微信(ウィーチャット)」は中国IT業界Tencent(騰訊)が運営するLINEに代わるメッセンジャーアプリで2011年にサービスが開始されました。中国語以外にも20以上の言語が設定と200の国と地域にカバーしており、現在のアクティブユーザーは11億人以上と驚異のユーザー数を誇っています。
ウィーチャットはテキスト・画像・動画・ボイスチャットでのメッセージを送り合いコミュニケーションをとるだけのSNSアプリではありません。ショッピング、飲食店の注文、タクシーの配車予約、チケット購入などメッセンジャーアプリを越えたSNSサービスと言えます。さらに新型コロナウイルス感染症の健康状況管理や、感染者との接触者には警告を促すというヘルスヘア機能もあります。
個人アカウント以外にも、企業やお店などのビジネス利用も一般的です。日本国内ではビジネスでのLINE利用に抵抗がある人が多くいます。しかし中国の場合はメール代わりのコミュニケーションツール、ID交換で名刺代わり、契約書や報告書などのデータ書類のやり取りを行い、ビジネスパーソンにも欠かせないアプリとなっています。
BtoC向けには商品・サービスの紹介や告知、クーポン発行、ECサイトへの導入、企業からのメルマガなどを行っています。
第2位:Sina Weibo新浪微博(シンラン・ウェイボー)
「新浪微博(シンラン・ウェイボー)」は中国最大手メディア新浪公司(SINA Corporation)が運営し、全世界では7億人以上が利用する人気アプリです。Facebookと投稿には140字の文字制限があるため中国版Twitterとも呼ばれています。近年では広告配信がFacebook、スマートフォン画面表示や表示に時間制限があるInstagramのストーリーズのような機能と、いくつかのSNSが混じったようなサービスが特徴です。
マイクロブログと言う意味がある微博としてサービスが開始されましたが、現在ではライブ配信、動画視聴、話題のニュース閲覧、ゲーム、広告配信、ビジネスやインフルエンサー向けの分析などさまざまな機能が利用できます。
またユーザーの場合は企業アカウントから新商品やサービスの情報を確認でき、ECモールや実店舗での購入、Weiboを使って購入した商品の口コミを投稿するという流れがあります。一方で企業側はユーザーの購買意欲をそそるような情報やクーポンを発行、ECモールや実店舗への誘致、集客や売上向上が可能です。ブランディングとして芸能人、インフルエンサー、KOLを起用し商品やサービスを紹介している企業が数多く存在します。
第3位:Baidu Tieba/百度贴吧(バイドゥ・ティエバ)
「百度贴吧(バイドゥ・ティエバ)」は2000年にサービスが開始された中国最大の検索エンジン「百度(バイドゥ)」が運営しているSNSで、百度贴吧は3年後の2003年にサービスがかいしされました。世界の検索エンジンランキングは第1位のGoogle社のGoogle、第2位Microsoft社のBing、第3位に百度公司の百度となり、中国では70%以上のシェアを誇っています。(2020年現在)
Google IDのように百度のIDを持っていればSNSを利用することができ、興味があるものや調べたいキーワードを検索して、同じ趣味や興味がある人同士が交流できるコミュニケーションツールです。
日本で言うところの5ちゃんねる(旧:2ちゃんねる)のようにスレッドを立てて掲示板(BBS)にてコミュニケーションをとることができますが、百度贴吧の場合は匿名ではなくIDを持った人のみが話せる場所となっています。
第4位:Tencent Weibo/騰訊微博(テンセント・ウェイボー)
「騰訊微博(テンセント・ウェイボー)」はWeChatを運営している会社の腾讯(テンセント)社が運営しており、中国版TwitterのようなSNSアプリです。別名「QQ」とも呼ばれています。先述したように騰訊微博 とは「新浪微博(シンラン・ウェイボー)」も中国版TwitterとFacebookのような機能を持つSNSで、同じくらいの数多くのユーザー数を持つ人気のアプリです。2つの大きな違いはユーザー層によるものです。
テンセント・ウェイボーのユーザーは農村部や地方都市に住む低賃金低所得者のエリアに住む人の利用者が多いと言われています。一方でシンラン・ウェイボーは中国本土にある北京、上海、武漢などの高賃金エリアに住む都市や、台湾や香港などの地域、日本を含めた海外での利用率が高い特徴があります。人によっては両方をうまく使い分けている人も多くいます。
第5位:TikTok/抖音(ティックトック)
「抖音(ティックトック)」はByteDance(バイトダンス)社が運営している、ショートビデオプラットフォームで、2017年にサービスが開始されました。日本では10代の学生を中心に若者世代に人気があり、音楽や音声に合わせてダンスを踊ったり、フィルター機能を使ってかっこいい動画を撮影・編集したりし、投稿・閲覧・共有ができます。
個人情報が中国共産党へ集まる可能性があるとして、インドでの使用禁止、アメリカ国内では新規ダウンロードを禁止と次々に制限がかかっているのが問題となっています。ガイドラインによっては日本国内での新規ダウンロードや利用を禁止されることも将来的にあるかもしれません。しかし現在中国ではインフルエンサーやKOLを起用したWebマーケティングで企業が力を入れているアプリです。
中国で人気のWeb広告とは
先ほど紹介した中国で人気のSNSアプリを利用したWebマーケティング手法について紹介していきます。SNSユーザー層と、自社商品やサービスのターゲット層交わるSNSアプリをしっかり把握し、適切な広告を打っていきましょう。
中国のリスティング|百度/Baidu(バイドゥ)
中国でリスティング広告を行う場合は、中国版Googleと言われる中国最大級の検索エンジン「百度/Baidu(バイドゥ)」がおすすめです。中国でのシェアは70%以上に及び、世界的に見ても中国語での検索が最も載った検索エンジンと言えます。
Googleでリスティング広告を行うように、キーワード検索をした後に検索サイトより上位に表示され、クリックした分だけ広告費が発生する仕組みです。Googleのリスティング広告を行ったことがある人で中国語が理解できる方であれば、すぐに運用することができます。
中国のSNS広告|WeChat/微信(ウィーチャット)
SNSで広告を行う場合は、中国版LINEの「WeChat/微信(ウィーチャット)」広告がおすすめです。WeChatの広告には大きく3つの広告が用意されています。まず1つ目は「モーメンツ広告」と呼ばれるもので、LINEのタイムラインのようなモーメンツという機能でテキスト・写真・動画での配信を行います。
2つ目は「公式アカウント広告」でフォロワー数など条件がありますが、公式アカウントの記事下部に広告バナーや商品訴求のページなどを目的別に選べます。また年代、住んでいる地域など属性を絞ることも可能です。
3つ目は「ミニプログラム広告」です。他のコミュニケーションアプリにはない独特なミニプログラムという機能があり、ECモール、クーポン、レンタルバイクの位置表示など生活に便利なものが揃っています。このミニプログラムではバナー、ポップアップ、動画の3つの広告から選ぶことができます。
中国のSNS広告| weibo/微博(ウェイボー)
中国版Twitter「weibo/微博(ウェイボー)」には4つの広告があります。1つ目は「検索ボックス広告」でキーワードを検索する際のボックス内に、自社公式アカウントや関連ページ、動画を表示させることができます。
2つ目は「露出型広告」でウェイボーアプリを起動した際に、静止画、GIF、一部分動画、全画面動画などタイプ別に広告を流せます。
3つ目は「ストーリー型広告」で、Instagramのストーリーズのように、一定の時間だけ動画広告が流れる機能です。購買欲をそそるような広告すぎない広告がカギで、限られた時間と短い動画でユーザーに魅力的にうつるような動画配信が必要です。
4つ目は「フィード広告」でFacebookのニュースフィールド広告のようなものです。具体的には公式アカウントのフォロワー、フォロワー以外のユーザー、その他年齢・性別・住んでいる地域などターゲティングし、ブランドの認知や商品紹介などを行うことができます。また訪日旅行前やECモールで購入前などでは、広告やクーポンなどを発行して集客や売上促進に繋げられます。
中国のインフルエンサー広告
中国では芸能人やモデルなどの有名人以外にも、インフルエンサーやKOLと呼ばれる一般人でありながらSNSで爆発的な人気を持つ人を起用したマーケティング手法が増加しています。日本でもユーチューバーやインスタグラマーなどフォロワーを数十万人・数百万人抱えるインフルエンサーは数多く存在します。KOLも同じく多くのフォロワーを抱えていますが、美容や料理などさまざまなジャンルの深い知識や実績を持つ人のことを指します。
そのためECコマースのライブ配信や口コミサイト(アプリ)、KOLが運営するブログ記事などで商品やサービスの紹介や宣伝を行い、認知度や集客に繋げることが可能です。
中国Webマーケティングで成功させるためのポイント
中国でのWebマーケティング手法はさまざまあります。どのWebマーケティング手法でプロモーションするにしても、成功させるために共通するポイントがあります。具体的にどこに気をつけるべきなのか、3つ紹介していきます。
ポイント①中国ユーザーの特徴や文化を理解する
中国人と一言で言っても、年齢・性別・住んでいる地域など属性によっては、考え方・価値観・嗜好など大きくことなります。そのため中国人の国民性という枠に加え、ターゲットとする人物の属性をしっかり理解し、ユーザーに合わせたマーケティングを行っていくことが大切です。
ポイント②ネイティブの翻訳と中国人目線の魅力ある文章
コスト削減のため無料の翻訳サイトや格安の翻訳サービス会社に依頼して中国語に変換した日本企業のWebサイトや、ECモールが多く存在します。そのようなサービスを利用するともちろんコストは抑えられ、数秒で翻訳できる手軽さがあります。しかし文法の誤りや普段使う単語ではなく堅苦しくなってしまったりなど、不自然な文章になることでユーザーの信頼が失われてしまうのです。そのためネイティブの人かつ、できれば依頼する翻訳ジャンル経験者に翻訳してもらうことが重要です。
またその他にコピーライティングのようにキャッチーで購買意欲が掻き立てるよう、「商品やサービスの魅力」「安全性」「利用の便利さ」など魅力的な文章や画像を作成することは必須と言えます。
ポイント③インフルエンサーやKOLを起用する
中国のSNS利用率は増加し続け、新しいサービスや機能が追加されるほど人気があり、普段の生活には欠かせません。マスメディア(テレビ、ラジオ、雑誌、新聞)が流行していた頃よりもSNSが普及している現在の方がトレンドスピードの早さが際立っているのが特徴です。
インフルエンサーを起用したマーケティングは日本でも一般的になってきています。中国の場合は口コミが重要視されSNSの伸び率も高いことから、インフルエンサーやKOLを起用したWebマーケティングは、認知度・集客・売上アップなどに効果的です。
まとめ
この記事では「中国のインターネットやSNS事情」や「中国で人気のSNS」ついて解説しました。中国にはインターネット検疫システムのグレート・ファイアウォールによって世界的に有名な検索エンジンやSNSを使うことや、海外で人気となっている情報を拡散することもできません。
しかし中国の発の検索エンジンやSNSには数億人いるユーザー数を誇っており、ユーザー層に合わせた広告を打つことで、広告・宣伝の効果を発揮させることが可能です。中国文化や習慣に沿ったSNSの機能をうまく利用し、数多くの人に自社の商品やサービスを広げていきましょう。
この記事へのコメントはありません。